NEWS RELEASE


TheShokoChukinBank


平成17年5月26日
商  工  中  金




「流動資産一体担保型融資(アセット・ベースト・レンディング)」
第1号案件を実行

−事業のライフサイクルを主眼とした中小企業の資金調達の新展開−



  商工中金は、「流動資産一体担保型融資(アセット・ベースト・レンディング)」のスキーム(注)を構築し、東京都に本社を置く紳士服製造業A社(資本金7千万円、従業員270名、年商22億円)に対して、7千万円の極度融資枠を設定しました。


 (注) 在庫が販売され売掛金となり、売掛金が回収され流動預金となる「事業のライフサイクル」に着目し、在庫・売掛金・流動預金を一体として担保取得するとともに一定の極度融資枠を設定するスキーム


 商工中金では、この取り組みが「呼び水」となり、(1)事業からのキャッシュフローを重視し、不動産担保・個人保証に過度に依存しない融資の促進、(2)中小企業の資金調達手法の多様化を図ること、また、(3)地域金融機関をはじめとするシンジケート・ローンアレンジの推進にも資することを期待しています。
 商工中金の取り組むアセット・ベースト・レンディング(以下「ABL」という)は、借入企業の事業フロー、いわば「事業のライフサイクル」を一体として把握し、かつ、原則としてこれのみを貸付の主要な引当てとするものであり、借入企業の不動産、機械設備もしくは有価証券を担保として徴求したり、または代表者の個人の信用力に過度に依存したりすることを想定していません。その意味で、商工中金のABLは、債権譲渡担保や動産譲渡担保をいわゆる「添え担保」と捉えてきた従来型の融資実務とは、根本的な発想を異にする取り組みです(ABLの詳細は別添の通りです)。


 商工中金では、再生支援を重要な施策と位置付け、「総合デフレ対応策」を踏まえ、平成14年11月に「中小企業再生支援本部」(本部長:専務理事)を設置し、さらに、経営改善計画の策定支援、フォローを行なうために審査本部内に「経営支援室」を設け、事業再生が必要な企業のサポートを本支店一体となって積極的に対応しています。
 今後も引き続き、中小企業の早期再生とともに、ひいては地域経済の活性化(地域再生)に貢献するべく、地域金融機関や中小企業再生支援協議会、整理回収機構(RCC)等の公的機関、地域再生ファンドと連携しつつ、DDS(デット・デット・スワップ)、DES(デット・エクイティ・スワップ)といった多様な再生手法や、上記のような新たな融資スキームであるABL(アセット・ベースト・レンディング)も活用し積極的に再生に取り組みます。



別添


ABLの詳細は、以下の通りです。

1. 本件の特徴
 
  (1) 担保取得の方法

上図のように、借入企業の事業フロー、いわば「事業のライフサイクル」を一体として把握し、かつ、これのみを貸付の主要な引当てとするものであり、債権譲渡担保や動産譲渡担保をいわゆる「添え担保」と捉えてきた従来型の融資実務とは根本的な発想を異にする取組みです。
 
  (2) シンジケートローンへの対応
    地域金融機関との連携を積極的に推進しようとする観点から、「シンジケートローン特約書」のひな型も準備しました。
    シンジケートローンとする場合も、「金銭消費貸借契約書」「担保設定契約書」に変わりはなく、別途「シンジケートローン特約書」を締結するだけの簡単な構造としました。
 
  (3) コベナンツ条項
    ABLにおいては、貸付金の担保は借入企業の事業のライフサイクルそのものであることから、その本質上、通常の不動産担保貸付等に比して詳細なコベナンツ条項が必要となります。
    契約書のひな型においては、自己資本比率やインタレスト・カバレッジ・レシオ等を指標として想定していますが、個別事案ごとにどのような指標を用いたコベナンツ条項をおくことが適当かを柔軟に検討することとなります。
 
  (4) 停止条件付連帯保証
    連帯保証債務の発生を一定のコベナンツ違反の場合に限定し、経営者として誠実に事業を遂行し、借入金の返済に努力していると認められる限り、(たとえ借入企業の事業及び財務状況が結果的に悪化したとしても)経営者の個人責任を追及しない(連帯保証責任を負わせない)方式をオプションとして採用しています。



2. 商品性等
 
  (5) 借入企業の主な要件
法人かつ「債務者=担保提供者」であること。
売掛先がある程度特定でき、売掛金の回収口座を商工中金に指定できること。
既に動産、債権(将来債権を含む)を担保提供していないこと。
ある程度、債権管理コストに見合う金額規模であること。

具体的には、経営再建中の中堅企業、資産背景に乏しい急成長企業等を想定しています。
 
  (6) 資金使途
    原則として、短期運転資金(在庫仕入資金等)となります。
 
  (7) 金利・貸付手数料
    極度貸付枠の設定を行う場合には、通常の約定金利のほか、いわゆる「枠設定フィー」として貸付手数料が必要となります。
 
  (8) 対象先
    真摯に再生に取り組んでいる企業、事業の将来性のある企業等さまざまな場合が想定されます。
これらの場合、適切なコベナンツによる債権者の立場からのガバナンスを発揮することにより、企業の早期再生への取り組みを促すものでもあります。



3. ABL開発の背景
 
   動産・債権など流動資産を主体とした担保融資、すなわちアセット・ベースト・レンディング(以下「ABL」という)は、中小企業向けの貸出手法としてアメリカでは従来より活用されてきました。ところが、我が国における中小企業金融は、これまで不動産担保や代表者の個人保証に大きく依存した融資が中心であり、ABLが利用される事案は近年に至るまで皆無といってよい状況にありました。しかし、不動産価格が依然として低迷するとともに、代表者の個人保証のあり方に対する問題点が指摘される昨今の状況から、このような伝統的な融資手法には限界も見られるようになっています。
 このような状況において、平成15年3月28日に金融庁から「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」が、また、平成16年5月28日に経済産業省から産業構造審議会産業金融部会「新たな企業金融機能のあり方に関する検討小委員会中間報告」がそれぞれ公表され、これらにおいて「新しい中小企業金融(担保・保証に過度に依存しない融資への取組み等)」が示唆されたこともあって、中小企業金融におけるABLの活用が注目されるようになっています。また、平成16年12月には「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例に関する法律」(以下「譲渡特例法」という)が成立し、多数の動産や債権の譲渡や担保権の設定について合理的な対抗要件具備の手法が用意されるに至るなど、在庫や売掛債権等を主要な担保とするABLが普及する法的環境が整いつつあります。
 平成17年3月29日には、前記アクションプログラムを承継する「地域密着型金融の機能強化の推進に関するアクションプログラム(平成17〜18年度)」が金融庁より公表され、そこにおいても「動産・債権譲渡担保融資」が具体的取組み事例として紹介されるなど、ABLの積極的な普及・促進に強い期待が寄せられています。