NEWS RELEASE


TheShokoChukinBank


平成16年3月11日
商  工  中  金




デット・デット・スワップ(DDS)第1号案件への取り組みについて
−中小企業再生支援協議会との連携により実現−



  今般、商工中金は、東京都中小企業再生支援協議会と連携して再生計画の策定を支援している中小企業者A社(東京都の金属製品製造業者)に対して、デット・デット・スワップ (以下、DDS)(注)を用いた再生支援に取り組むこととしました。
  本件は、2月26日の金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)改訂後、同マニュアルに沿ったDDSとしては、コベナンツの内容を含め中小企業者に適用した我が国で初めての取り組みです。
  この取り組みが「呼び水」となり、中小企業の再生と地域金融機関の債権の健全化、ひいては地域経済の活性化に繋がることを期待しています。

1. 第1号案件の概要
 
  (1) 債務者の概況
東京都の金属製品製造業者
過剰債務の
原因等
バブル期に売上の伸長を見込んで工場設備を新設。その資金を借入金により賄ったこと、予定通りの業容の拡大が図れなかったことから、借入負担が増大。
加えて、主力販売先の破綻により売上も減少。
自力で収支改善に着手し、本業の黒字転換に目途がついてきたものの、過去の過剰債務の削減が急務となっている。
 
  (2) 東京都中小企業再生支援協議会(以下、都協議会)、商工中金が果たした役割
  2-1 都協議会が果たした役割
    個別支援チームを立ち上げ、資産の評価を行うとともに、同社の再生計画の策定を支援し、取引金融機関の調整を実施した。
    商工中金から提案のあったDDSスキームを踏まえた最終的な再生計画に対し、協議会の専門家アドバイザーから「合理的かつ実現可能性の高い計画」との調査報告を受け、早期再生を行うための枠組みを構築した。
    取引金融機関として、商工中金と地銀が同社の支援に万全を期す。
 
  2-2 商工中金が果たした役割
    取引金融機関である商工中金は、DDSスキーム*を含む再生支援策を都協議会に提案して高い評価を得るとともに、同社の承認を得た。
* 森・濱田松本法律事務所のリーガルチェック、並びに中央青山監査法人のアドバイスを受け、スキームおよび契約書モデルを策定。
 
  (3) DDSの効果等(同社のメリット)
    DDSの実行により、同社の“自己資本”がDDS実行分だけ増加し、債務者区分が上位に遷移することにより、今後の資金調達を安定的に見通せるようになる。
    同社は、黒字化した本業に特化して計画を遂行できる。

2. DDSへの取り組みの背景等
 
 
各地に中小企業再生支援協議会が設置されたことにより、(1)精度の高い再生計画の策定、(2)取引金融機関の調整という面で、再生に取り組む中小企業者の支援体制は大幅に改善が図られている。
過剰債務を抱えた中小企業の早期再生への抜本的な改善には、債権放棄や、デット・エクイティ・スワップ(DES*)、デット・デット・スワップ(DDS**) といった手法が挙げられるが、金融機関にとってはそれぞれに課題があり、適用が難しい状況にあった。
  具体的には、債権放棄は地域のモラルハザードや無税化適用(産業再生機構案件では無税処理が可能)の問題、DESは取得した株式の流動性(売却が困難)の問題、DDSは劣後化させた貸出金の査定(不良債権処理)の問題、など。
 
* DES: 既存の債務の一部を債務者の株式と交換すること。主に大企業の再生支援で利用される
** DDS: 既存の債務の一部を劣後借入金(企業が法的整理等に陥った場合、一般の借入金債務よりも返済順位が劣後する無担保借入金)に変更すること。金融検査マニュアル上は、要注意(要管理)先等の中小企業者を対象にしている。
こうした中、DDSについて、先般(2月26日公表)の金融検査マニュアル改正により、合理的かつ実現可能性が高い再生計画と一体として行われ、かつ同マニュアルで定める一定の要件を満たすものについては、金融検査において当該企業の「資本」(過剰債務の減少)と見なすことが定められ、これにより金融機関は当該企業の債務者区分を上位の区分に引き上げる(要注意先(要管理)→要注意先(非要管理)→正常先)ことが可能となった。
このことは、金融機関にとってDDS利用のハードルを大幅に低下させ、DDSを活用した中小企業者の抜本的な再生を行う環境が整ったと言える。

3. 商工中金のDDSに対する取り組み
 
 
DDSは、中小企業者にとって事業の早期再生に資する。また、金融機関にとって、不良債権処理の軽減が図られる上に、手法としては既存貸出の条件変更であることから取り組みやすい。さらに、各地の中小企業再生支援協議会との連携により、一層の推進を図ることが可能であると判断し、DDSに対して積極的な検討を行ってきた。
中小企業専門の政策金融機関として、中小企業再生支援協議会における役割を踏まえつつ、リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラムで業務提携を行っている地域金融機関等を対象に、「DDSスキームの紹介」や「コベナンツを含むDDSの契約書の公表」など再生支援における金融フロンティア開拓の役割も果たして参りたい。

(注) DDSとは
  金融機関が保有する貸出金の一部を劣後貸出金に振り替え、中小企業者に長期の劣後貸出金を供与するという先駆的な取り組みであり、昨年7月に公表された金融庁監督局長の諮問機関である「新しい中小企業金融の法務に関する研究会」報告書で、中小企業者の財務再構築のための有効な手法として明らかにされたものである。
 
<DDSの対象と想定される中小企業者>
  (1) 妥当な再生計画のもとに本業の黒字(営業黒字)が確保されており、再建・事業好転の見通しが合理的と認められる
  (2) 地域経済の産業活力維持に資する等政策的意義が認められる
<中小企業者への活用イメージ>
<債務超過解消までの期間について>
  上記「中小企業者への活用イメージ」において、再生計画における年間の債務超過解消額が10であるとすると
  (1) 劣後借入金50を資本とみなすことができれば、5年で債務超過が解消される(事業の収支は黒字なので5年後には正常先になる)。
  (2) 一方で、劣後借入金50を資本とみなすことができないと、債務超過100を解消するまでに10年を要する(10年間は要注意先のままとなる)。
<参考>
劣後貸出金の主な内容等
(1)法的性質 ・条件変更契約
(2)保証人 ・代表者を含めて保証を免除する
(3)担保権の適用 ・根抵当権を含めて担保権を適用しない
(4)コベナンツ(誓約)事項等 ・提出資料や報告事項等いくつかのコベナンツを設定した
(5)貸倒引当金 ・劣後貸出金の全額に貸倒引当金を積む