すべてはお客さまのために。

社長インタビュー

商工組合中央金庫 代表取締役社長

関根 正裕

「変わったね、商工中金」。全国のお客さまからそんな声が寄せられるようになった。1936年の設立以来、中小企業のサポートに取り組んできた商工中金は、いま民営化という転機を迎えている。ノルマの廃止や自立・自律型の組織づくりなど、すべての改革の根底にあるのは「お客さまのために」という変わらぬ理念。これまでの歩みと未来の姿について、商工中金社長・関根正裕が語る。

創業の時も、成長の時も、
ピンチの時も
中小企業とともに歩む金融機関、商工中金

2018年の社長就任から7年となります。現在、商工中金とお客さまとはどのような関係性を築かれているのでしょうか。

関根:現在、当金庫の取引先企業数は約7万社、貸出金 は約9.6兆円と、数多くのお客さまにご利用いただいており、お客さまに寄り添いながら、成長をサポートする関係が構築できていると思います。企業の課題はさまざまですし、ニーズも高度化・多様化・複雑化しています。そういったお客さまの声にしっかりと応えられる金融機関にならなければという思いを日々強くしています。

印象に残っているお客さまの声を教えてください。

関根:全国を回る中でよく伺うのは、「創業時に他の金融機関が貸してくれない中で、商工中金だけが話を聞いて資金を出してくれた。それで今がある」というお話です。また、直近でいえばリーマンショックや東日本大震災、コロナ禍などの危機に際しても、民間金融機関の融資残高がずいぶんと減少した中で、商工中金はしっかりと融資を行っています。「危機のときに本当に支えてもらえた」という声も、たくさんいただきました。

まさに、創業以来の理念が息づいているということですね。

関根:そうですね。そもそも設立が1936年、昭和恐慌の後のこと。中小企業の金融の円滑化を目的として設立された金融機関ですから。民営化を迎える今も、その使命を果たし続け、姿勢として貫き通さなければと思っています。

ノルマの廃止、コンプライアンス意識の徹底。
自立・自律した社員が「お客さまのために」行動するように

2018年に社長に就任された当初、お客さまである中小企業の皆さまからの、商工中金に対するイメージはどうであったと感じましたか?

関根:中小企業向けの専門金融機関としてずっとやってきたこともあり、お客さまからはとても信頼されていると感じました。また、社員一人ひとりは本当にまじめで、中小企業のお客さまのために一生懸命やろうという「想い」を持っていました。

ただ、当時は不正事案をはじめとするさまざまな問題もあり、風当たりは強かったのも事実です。私は、ガバナンスやマネジメント、そしてコンプライアンス意識に課題があると考え、そこを改善すれば、商工中金は再生できると確信していました。

具体的には、どんな改革を行ってきたのでしょうか。

関根:まずは、厳しいノルマが不正事案につながったという反省のもと、ノルマを廃止しました。さらに、本部から営業店ごとに目標を割り振ることも止めました。これらはとても大きな改革になったと考えています。

なぜならば、ノルマや地域の実情に合っていない目標割り振りを止めることで、数字を上げるためではなく、「いかにお客さまのお役に立つか」、この一点での営業活動に専念できるからです。手数料稼ぎや、融資を伸ばすためのプロダクトアウト的な営業は絶対にやるな、とも、ずっと言ってきました。

それらの改革に、社員の皆さんは不安ではなかったのでしょうか?

関根:もちろん、はじめは戸惑いもあったと思います。ただ、地域によって産業構造や文化、考え方、暮らしなどが異なり、中小企業の実情や課題も違います。本部が一律に数値を押し付けるより、営業店が自分たちで考えて目標を立てる方が、むしろ合理的です。これらの改革によって、社員が自ら考え、自らお客さまのために動く。そんな「自立・自律」した組織に変わっていきました。数字を達成することが第一ではなく、「いかにお客さまのお役に立つか」を軸に社員が行動してくれるようになりました。

改革の結果、どのような変化が表れましたか。

関根:お客さまからの評価は確実に高まっています。「商工中金、変わったね」と言ってくださる方が多いです。営業姿勢がずいぶんと変わったと。また「商工中金の社員は本当によく話を聞いてくれる」という声も増えています。お客さまアンケート調査でも信頼度や満足度は年々上昇しており、もうこれ以上上がらないのではないかと思うくらい、毎年右肩上がりです。そして、お客さまからの評価が表れる最も客観的な指標である「業績」も、毎年右肩上がり。これも、評価の証になっていると思います。

民営化はゴールではなく「スタート」
変わらぬ理念のもと、お客さまのために
チャレンジする

直近では、システムや人材への投資にも力を入れられているそうですね。

関根:AIやデジタル技術の進化が非常に速くなっているので、そうした分野への投資は欠かせません。それに加えて、人的資本への投資、つまり社員一人ひとりの成長支援にも継続的に取り組んでいます。

今後さらに注力したいサポート領域は?

関根:構造的な課題である「人材不足」や「事業承継」への対応、そして「デジタル化」支援などが挙げられます。中小企業の課題は多様化していますから、お客さま一社一社に応じた“寄り添い型”の支援が必要です。

中小企業のお客さまにとって、さまざまな金融機関がある中で「商工中金」を選ぶメリットはどこにあるとお考えでしょうか。

関根:まずは、他の金融機関に負けない高度なサービスを提供できるという点。さらに、全国に支店があり、多様な業種、地域性に応じた情報を蓄積している点ですね。また、地域金融機関との連携・協業がしやすいのも商工中金の強みです。地域経済を活性化し支えていくには、私たちだけではできませんから、地域金融機関の皆さんと一緒にやっていきたいと考えています。実際、ノウハウ不足やリスクを分担したいという理由で、連携を求められる機会も増えています。

民営化を迎えた今、組織としての覚悟を改めて教えてください。

関根:民営化はゴールではなく、まさにスタート地点だと思っています。経営の自由度やスピード感も上がり、商工中金にとって大きなチャンスだと捉えています。ただ私は、これは「商工中金のための民営化」ではなく、「お客さまのための民営化」だと思っていて、その成果をきちんとお客さまに還元し、実感していただくことが大事だと考えています。業務範囲が広がることにより、お客さまのためにできることの幅も広がります。

一方で、設立の趣旨である「中小企業の金融円滑化」や「セーフティーネット機能」は商工中金の根幹として、従来と変わらぬ姿勢で貫いていきたいと思っています。

Profile

関根 正裕

商工組合中央金庫 代表取締役社長

1957年生まれ、東京都出身。早稲田大学政治経済学部卒。1981年株式会社第一勧業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)入行、2007年株式会社西武ホールディングス入社。不祥事後の改革や経営再建などに力を発揮し「危機管理のプロ」とも呼ばれる。2018年から株式会社商工組合中央金庫代表取締役社長兼社長執行役員に就任し、ガバナンス強化や中小企業支援体制の刷新を推進。

この記事をシェアする

  • X
  • Facebook
  • Line

公式チャンネル

  • YOUTUBE

Other articles

ほかの記事をみる

閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる