

パートナー対談
経営再建×商工中金
鹿児島県本土と奄美群島を結ぶ貨物航路を運航し、離島のライフラインを支える共同組海運株式会社。同社は経営再建という難題に向き合いつつも、新たな挑戦を続けてきた。その歩みに、商工中金は中小企業をサポートする金融機関としてどう寄り添ってきたのか。プロジェクトの舞台裏と、次なる成長へのビジョンを共同組海運株式会社・牛田社長と商工中金・木下が語り合う。

経営再建、そして新造船の構想へ
一貫して寄り添った
商工中金との出会い
お二人の出会いについて教えてください。
木下:最初にお会いしたのは2018年でしたよね。私の第一印象はいかがでしたか?
牛田:2018年は、私がこの会社の再建に取り組み始めて4年目。MBO*で経営権を取得して、残っていた3億円の民事再生債務を整理し、1年後をめどに新しい船を造るというストーリーを描いて商工中金さんを訪問しました。金融機関にとっては非常にリスクが高いと感じる話だったと思いますが、真摯に聞いていただいて、結果的にスムーズに動いていただきました。木下さんはこちらの意図をつかむのも早く正確で、とても優秀な方だなという印象を持ちました。ところで、木下さんから見た私はどう映っていましたか?
木下:言葉を選ばずにいうと、豪快な方だなというのが第一印象でした。ただ、その裏にすごく緻密さも感じていて、両面を持っていらっしゃる経営者だなと。外部から来て難しい状況にある会社を引き継いだ、その覚悟もひしひしと伝わってきました。私自身も「ぜひお役に立ちたい」と強く思ったのを覚えています。
*Management Buyout(マネジメント・バイアウト)のこと。企業の経営陣が自社の株式等を買い取ることを通じて経営権を取得することを指す。
当時、会社として一番の課題は何だと考えていらっしゃいましたか?
牛田:大きな課題は、保有している2隻の船ですね。特に1隻は老朽化が進み、船腹も小さい。これを、新造船と入れ替えるのが一番の目標でした。民事再生債務の返済から新しい船の建造まで、30億近いプロジェクトでしたが、商工中金さんのおかげでスムーズに進みました。今の弊社が良好な状況にあるのは、商工中金さんのおかげといっても、過言ではないですね。
木下:民事再生債務も関係し、越えなければいけないハードルも多い取り組みでしたが、当時、社長は商工中金に対してどのような期待をされていましたか?
牛田:鹿児島という地域柄もあり、メガバンクはあまり積極的でない印象がありました。そこを代わりに担ってくれるのが商工中金さんだと、勝手に期待していましたね。
木下:私も簡単ではない案件だなとは感じていましたが、それ以上に牛田社長の強い意志や、実際に業績も上向いているという事実もありましたので、なんとかお力添えできたらと思い行動に移しました。



共同組海運が保有する2隻の貨物船。左が「みさきⅡ」(2021年11月竣工)で、右が「つばさ」
(2023年10月竣工)。
「できない理由より、
できる理由を考えていく」
スピードと“共感”が支えた
再生プロジェクト
商工中金の対応はいかがでしたか?
牛田:MBOをして、民事再生債務を片付けて、船を造る。その一連すべてに商工中金さんに関わってもらい、しかも動きも速かった。それが何よりありがたかったですね。新船1隻目のデビューした1カ月後に、2隻目の建造に動き出せましたし。他行さんも巻き込みながら、ロシアによるウクライナ侵攻前までに造船契約まで完了できたのは、今振り返るとすごく大きな成果でした。
木下:共同組海運さまのご事業は、離島のライフラインとして多くの人々の生活を支える仕事です。私もいつも以上に「お役に立ちたい」という思いを持っていました。もうひとつ、個人的には難しい案件のほうが燃えるタイプなので、より力が入りました。
牛田:今考えてみても、鹿児島という土地でこの件に対応できたのは商工中金さんだけだったと思いますよ。他ではすべて受け止めきれなかったでしょう。離島航路を守るという大義、当社のミッションに寄り添ってくれた、そこが大きかったですね。
木下:私自身、海運業にはあまり知識がない中で、社長にはいろいろと丁寧に教えていただいて。業界についてもより深く知れて、社長の思いや事業の重要性も加えながら、社内で説得する材料を用意しました。ある意味、社長と二人三脚でプロジェクトを進めた実感がありますね。
牛田:資料をお渡ししたときも、木下さんがうまく金融機関向けにアレンジしてくださって。とても頼りがいがありました。一連のプロジェクトがうまくいったのは、「運」もあったと思います。もちろんやれることはすべてやりましたが、木下さん、上司の方々、タイミング――どのピースが欠けても、今の共同組海運はなかったでしょうね。
木下:運を引き寄せる人は、それだけの準備を日々しているともいわれます。社長も相当の覚悟で取り組まれてきたからこそ、良い流れにつながったのではないでしょうか。



地域とともに歩む会社の未来に、
商工中金ができること
安定を超えて、次の成長ステージへ
今後、どんな夢や展望をお持ちなのか、お聞かせください。
牛田:2隻で運航する離島航路をメインとしていますので、年々売上が増加していくであるとか、そういうことがあるビジネスではなく、限界もあります。業種問わずM&A等々でグループ会社を増やし、全体を強くしていきたいというのは、ここ数年考えています。
木下:私が担当していた頃と比べても、現時点で事業はずいぶん大きくなっていますよね。今後、さらに目指していくステップはありますか?
牛田:そうですね。グループで数百億くらいの事業規模にできたらと考えています。
木下:こうした展望は、会社を引き受けられた当時から温められていたのですか?
牛田:いやいや、当時の惨状はかなりのものでしたから、とにかく黒字化することで精一杯。目先のことばかり考えていましたね。一つひとつクリアして、やっと先が見えるようになってきました。
今後、商工中金との関係はどうありたいとお考えですか
牛田:今後また何かチャンスがあったときに、これまで通り積極的に支援してもらえる関係でいたいですね。そのためにも安定して黒字を出し続けることが大事だと思っています。鹿児島で商工中金さん主催の会などに出席して感じるのは、多くの経営者が商工中金さんを頼りにしているということ。私も同じ気持ちです。もちろん、順調なときだけではなく、アクシデントが起きた際も含めて、長いスパンで対応していただけるとありがたいです。
木下:商工中金としても、最初は難しい条件下でのサポートでしたが、今後、良いときも悪いときも、いつでもしっかりとお役に立てる、社長の夢や挑戦にも伴走できる存在でありたいと思っています。私はもう担当を離れましたが、共同組海運さんは思い入れのある会社です。個人的にも、今後もずっと応援していきます。

みさきⅡへの積荷作業風景。食料品や農産物、建設資材、バイク、自動車、大型車両・重機など、離島の生活を支えるあらゆる物資を運搬する。
Profile

牛田 篤志
共同組海運株式会社
代表取締役社長
2014年、共同組海運の経営建て直しのため外部から招聘される。2018年MBOによって経営権を取得。早期黒字化を達成し、2021年「みさきII」、2023年「つばさ」と、次々に老朽船を新造船と入れ替えるなど辣腕を振るう。
共同組海運株式会社
鹿児島県本土と奄美群島を結ぶ貨物航路を運航し、離島のライフラインを支える海運会社。食料品はもちろん、各種建設資材や出荷される農産物、大型重機、さらには危険物も安全に輸送する。


木下 航
株式会社商工組合中央金庫
マーケティング部マネージャー
2017年1月から2020年9月まで鹿児島支店に在籍し、共同組海運株式会社を担当。現在はマーケティング部にて勤務し、市場調査・分析、各種推進企画の立案・遂行に携わる。
共同組海運株式会社
鹿児島県本土と奄美群島を結ぶ貨物航路を運航し、離島のライフラインを支える海運会社。食料品はもちろん、各種建設資材や出荷される農産物、大型重機、さらには危険物も安全に輸送する。
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