輝く地域の中小企業

ステテコ・リバイバルを演出、
着心地の良い肌着を丁寧に作る

株式会社アズ

着心地の良さを生む高い縫製技術、国内生産にこだわる

“格好悪い”ステテコを新たなファッションアイテムに

主力商品である男性用クレープ生地(ちりめん)を使った肌着。布の裁ち目を重ねて縫うだけのオーバーロック(かがり縫い)だと、飛び出た縫い代が着用したときに気になりやすいが、飛び出しのないタコ巻き縫いだと肌触り、強度の両面でメリットが大きい

 ステテコというと、男性の肌着のイメージしかない読者も多いかもしれない。室町時代からある股引が、明治時代にズボン下に変化して丈の短い半股引となり、それをはいて踊るステテコ踊りが流行してステテコと呼ばれるようになったという。
 戦後、かつては高級生地だったクレープ生地(ちりめん)が量産化された。表面がでこぼこで肌に当たる部分が少なく涼しいと、夏の肌着に広く使われ、ステテコは、夏のお父さんたちの定番スタイルとなった。
 ジーンズなどの登場で、格好悪い時代遅れのものというイメージがついたステテコだが、2008(平成20 )年、「ステテコドットコム」というWEBサイトが開設され、おしゃれなデザインの製品が登場。ゆったりした着心地の良さも受けて、若者に人気が拡大し、女性のファッションアイテムとしても定着した。このサイトを立ち上げたのが㈱アズ(大阪府箕面市、武村貴司 社長)だ。

「あったらいいな」で製品を企画

国内生産にこだわり国内協業や高い縫製技術で高付加価値化

技術開発課。本社企画部門のデザイン案を基に型紙を起こし、データを工場に送信する。なお、型紙専用ソフトを使い、人間工学なども取り入れて、体にフィットする着心地の良い肌着を実現する特許技術も含むノウハウが盛り込まれている

 現社長の祖父・元七氏は、丁稚奉公を経て独立し、1938(昭和13)年から肌着の製造・卸売を始めた。夏はクレープ生地のステテコ、冬は暖かく柔らかなメリヤス肌着(ラクダ)という創業当時からの二つのシリーズは、今も同社の主力商品で、業界有数のシェアを誇る。同社は75年に生産部門を分社化し、主に夏物のクレープ肌着の縫製工場の㈱サンクローバ(大分県国東市)と、主に冬物の縫製工場の㈱サンウール(熊本県天草市)を設立。2004年にサンウールはサンクローバに編入されるが、アズの製品の大部分は、これらの自社縫製工場4カ所で今も製造されている。

自動裁断機。型紙データを基に自動的に裁断する。一度に複数枚の生地を裁断することができる。難易度の高い裁断作業を無人で高精度・高品質に行うことができる

 日本ならではの丁寧なものづくりによる着心地の良さ、高品質を実現するため、国内協業を進めている。例えばステテコの場合のクレープ生地は、滋賀県高島市にある工場で糸から生地を織り、「しぼ」と呼ばれる凹凸を作って晒し、京都・山城地域の型捺染機で色柄を付ける。これを大分の工場で裁断・縫製する。
 なお、裁断の型は、本社企画部門が作ったデザイン案を基にパタンナーの社員が型紙を起こし、デジタルデータを工場へ送る。工場ではデータに基づき自動裁断機が精度の高い裁断を行う。一方、縫製工程では勤続30年以上のベテランを含む熟練の技術を受け継ぐ従業員が、独自の改良を重ねたミシンで縫製する。

「メードインジャパンの優れた製品を海外に売り出していきたい」と語る武村社長

 このような高付加価値化の取り組みにより、同社製品は高めの価格帯で商品展開をすることが可能となり、消費者の支持を得ている。「糸の企画開発を行い、新素材で特許も取得している。ブリーズテックスでは、自動車部品のフィルムを衣料に応用している。今後も柔軟な発想で付加価値を高める製品を開発し、メードインジャパンの優れた製品を海外に売り出したい」と武村社長は将来を展望する。

企業名:株式会社アズ スライド

企業データ

  • 本社:大阪府箕面市船場東3-3-7
  • HP:http://www.ascorp.co.jp/
  • TEL:072-728-8111
  • FAX:072-728-8112
  • 創業:1938(昭和13)年2月
  • 設立:1957(昭和32)年2月
  • 資本金:9000万円

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