提供 : 商工中金
「しなやかな強さ」
支える
コロナ禍も地域
価値向上に全力
新型コロナウイルス禍の収束が見通せない現在。そんな逆境下でも攻めの経営にかじを切る企業がある。貸しおしぼり業を展開するFSX(東京・国立市)もその一つだ。商工中金は地域金融機関と連携し、FSXの財務体質強化と戦略的な設備投資を目的に協調融資を実行した。地域の価値向上のため、企業に寄り添う商工中金の強い思いはコロナ禍でも変わらない。
抗ウイルス・抗菌おしぼりが人気
新たな発想で攻めの経営
感染拡大が続く新型コロナウイルスの影響で飲食業や観光業が大きな打撃を受ける中、関連業界も厳しい経営環境にある。おしぼり業界も例外ではない。そんな逆境下でもFSXは新たな発想で攻めの経営の姿勢を崩さない。その一つが抗ウイルス・抗菌のおしぼりだ。
開発のきっかけは新型インフルエンザが流行した2009年。海外の航空会社から「日本に向かう機内で衛生対策に使える抗ウイルスおしぼりはあるか」という問い合わせだった。同社の藤波克之社長は東京工業大学と慶應義塾大学発の合同ベンチャーとの共同研究によりポリ酸を配合した抗ウイルス・抗菌の特許技術「VB」を開発。VB加工を施した使い切りおしぼりの製造を始めた。
そして今回の新型コロナで人々の衛生への意識の高まりとともに飲食店や宿泊施設を中心に同社の抗ウイルス・抗菌の使い切りおしぼりが注目を浴び、引き合いが一気に強まった。「増産しても製造設備の能力が足りず、欠品で皆さんにご迷惑をかけてしまった」と藤波氏は語る。

藤波 克之 氏
変化に対応、資金調達で壁
一歩先行く発想と行動力で時代の変化に〝しなやかな強さ〟で対応し、おしぼりに新たな価値を付加し続けるFSX。「攻めの経営」でおしぼり用冷温庫「REION」の開発・製造・販売やECサイトの開設など新規事業を次々と立ち上げてきた。
攻めの経営を続ける一方、ファイナンス面で課題があった。新工場建設や経営多角化に際し複数の金融機関から資金調達を実施した結果、取引のある金融機関は10行近くになっていた。負債と資産がアンバランスな状態で、返済期限もバラバラなため「銀行との折衝に時間を取られ、資金計画に頭を悩ませる毎日だった」(藤波氏)という。そんな中で頼ったのが中小企業専門の金融機関、商工中金だ。
商工中金との取引はFSX前社長時代の00年にさかのぼる。現社長就任以降も事業計画策定のための経営サポートを実施するなど、金融にとどまらず伴走支援を行ってきた。

増田 健太郎 氏
(現在はソリューション事業部)


大学発ベンチャーと共同開発した抗ウイルス・抗菌技術「VB」を活用し、使い切りおしぼりを製造。

財務基盤強化、
企業の挑戦を後押し
協調融資を実行、資本性劣後ローンも
当時、FSXの担当をしていたのは商工中金八王子支店(現ソリューション事業部)の増田健太郎氏だ。そんな増田氏に藤波氏の第一印象を聞くと「事業の将来性を前向きに考え、強い意志と行動力がある社長だと感じた」という。
藤波氏からファイナンスの相談を受けた増田氏は、FSXの財務体質改善のために借り入れをまとめるシンジケートローン(協調融資)と資本性劣後ローンのスキームを提案。同社の事業性評価を行うとともに、コンサルティング会社と事業計画の策定に動いた。同時に各金融機関からの同意と協力を取り付けるために藤波氏に同行し、取引銀行への説明に奔走した。
「各行からは厳しい意見や要請があった」と増田氏は明かす。さらに新型コロナの感染拡大による経済状況の悪化もあり、途中で計画の修正も余儀なくされた。
しかし藤波氏の熱い思いと増田氏の粘り強い交渉、地道な調整が実を結び、商工中金と地域金融機関との協調による総額10億5千万円のシンジケートローンの組成が実現。さらには2億円の資本性劣後ローンの実行により、キャッシュフロー改善と財務基盤強化に向けた素地が整った。「決算書の安全性が高まったことでサプライヤーからの信用度が高まり、使い切りおしぼり原料の調達量が増やせるようになったこともうれしかった」と藤波氏。
商工中金は全国のネットワークを活用してビジネスマッチングを実施。販路拡大に向け、利用ニーズのあるホテルや飲食店を紹介した結果、4件の成約につながった。
昨年11月はコロナの状況下にもかかわらずFSXは単月最高売り上げを達成。「私にとって増田さんは〝戦友〟。今回のスキームには本当に感謝している」と藤波氏は笑顔を見せる。

おもてなしの感動、世界に
今や飲食店に欠かせないおしぼり。古くは江戸時代の旅籠で客の旅の汚れをふき取るために用意した、水に浸して絞った手ぬぐいに由来するという。「例えば寒い日に温かいおしぼりを出されるとちょっとうれしくなりませんか。単に食べる前に手をふくだけでない、新たなおもてなしの感動を世界に届けたい」と藤波氏。
FSXは現在、布おしぼりや使い切りおしぼり全製品にVB加工をしている。同時にVBをクリーニングやダストコントロール産業などに横展開。こうした新たなニーズがコロナ禍の売り上げを下支えした。さらにはおしぼりに使うタオル生地の開発も手がけ、関連アイテムの製造・販売も展開。気分転換やリラックス効果のあるアロマオイル配合のおしぼりや、凍らせて使うおしぼりなど商品開発に積極的だ。
藤波氏は「今後も商工中金のサポートに期待している」と信頼を寄せる。
コロナの収束が見通せず、経済も予断を許さない状況が続く。そんな中でも地域の価値を向上させるため、中小企業に寄り添う商工中金の姿勢は変わらない。


おしぼりの洗浄・品質管理を徹底するだけでなく、関連商品として冷温庫やアロマ芳香剤も開発。