――商工中金はS(スタートアップ支援)、E(サステナブル経営支援)、T(事業再生支援)の3分野に注力しています。各分野を担当している皆様から、中小企業の現状とそれに対する商工中金の姿勢について教えてください。
スタートアップ支援室
島當 航 氏
島當 政府が「スタートアップ育成5カ年計画」を打ち出すなど、スタートアップ支援分野は注目を集めています。日本企業の将来を支えるスタートアップの育成は当然大切ですが、一方で世界的な環境変化もあって足元では株式を中心とした資金調達が難しくなっているのも事実です。その分、借入による資金調達ニーズが高まっており、金融機関の役割も大きくなっています。
商工中金は4年ほど前からスタートアップ支援を強化し、今ではお取り引きいただいた企業が数百社まで広がりました。これまでの実績で培った金融面でのノウハウの提供や、全国の支店を通じて中小企業とスタートアップをつなぐビジネスマッチングなど、様々な形でサポートしています。
スタートアップ支援室
島當 航 氏
サステナビリティ推進室
新倉 奈々 氏
新倉 人類の活動が気候変動に及ぼす影響が目に見えて増えています。2022年のCOP27でも地球温暖化に対する世界の決意は揺るぎなく、世界中で進むであろう脱炭素の取り組みは商工中金のお客さまにも影響するでしょう。企業のあり方としては環境だけでなく人権や従業員の幸せといった課題も問われるようになっています。
商工中金は「SPEEDの視点」、つまりSustainability、Productivity、Empathy、Ecology、Digitalという5つの視点で、中小企業のサステナブル経営をサポートしています。商工中金自身が中小企業の皆さまとともに成長していくためにも、経済的だけではない価値を向上させるお手伝いをしていきます。
サステナビリティ推進室
新倉 奈々 氏
コンサルティング室
水嶋 浩之 氏
水嶋 中小企業において事業再生は大きなテーマの一つです。特に足元ではコロナ禍の影響もあって過剰な債務を抱える企業が増えてきました。加えて、円安など様々な環境変化もあって、なかなか損益が回復しない悩みを抱える企業もいます。安定的に事業を継続するうえで必要なキャッシュフローを十分に生み出すことができていない企業に対し、金融機関として何ができるかが今の課題です。
そのために必要なのは専門性向上です。もともと商工中金は先駆的な金融手法に取り組むなど、事業再生分野では古くから実績がありますが、コロナ禍や外部環境の変化もあって改めてニーズが高まっています。事業性をきちんと分析し、たゆまぬ経営努力を続けられているお客さまに伴走することで、商工中金独自のサポートに取り組みます。
コンサルティング室
水嶋 浩之 氏
2022~24年度を対象にした中期経営計画で掲げた主要戦略の1つで、3つの差別化分野「S・E・T」を挙げて取り組みを強化している。Sの分野ではスタートアップ特有の課題を踏まえた一気通貫のサポート、Eでは「SPEEDの視点」を活用した事業性評価やソリューションの提供、そしてTでは専門性向上と対応力の底上げを通じた「事業再生のトップブランド」構築を目指している。創業期や成熟期など企業のライフステージごとの経営課題に着目して、商工中金として事業性評価能力を向上するとともに、金融支援と本業支援の両面で企業をサポートしていく。