輝く地域の中小企業

産業用プリンター関連のニッチを
深耕、新領域の開拓で先駆ける

紀州技研工業株式会社

厳しい規制をクリアした可食用インクで食べ物や薬に直接印字

ロット番号や賞味期限などニッチな印字ニーズを発見

食品の多くは消費期限または賞味期限、トレーサビリティー関係など、品質を保証するさまざまな情報を表示することが義務付けられている。また、各種製品は管理のため、ロットナンバー、さらには個別の製造番号なども印字する必要がある。
このような変化する日付や番号などを間違いなく着実に印字するニーズを汲み取ることで、事業領域を拡大し成長してきたのが紀州技研工業株式会社(和歌山市、釜中甫干社長)だ。

1960年代、品質管理の考え方が広まったこともあって、製造番号や製造年月日などを製品に明示する必要が生じた。当時、花王和歌山工場でパッケージ関連の機械設備を担当していた釜中社長は、番号印字機について印刷機メーカーや印刷業者に相談したが、どちらからも断られた。それなら自分で機械を作ろうと、68年に同社を起業した。
その根底には、「まだ世の中にないもの、お客様が必要とするものを作ろう」という釜中社長の思いがある。わずかな元手でゼロからスタート。最初は開発も営業も社長一人でやっていて、「努力努力努力」、つまり人の3倍努力せよとの社訓のもと、事業を拡大してきた。

ゴム印からインクジェット、インク、さらに新領域へ

タマゴに印字する装置。食品衛生法の厳しい基準を満たす専用インクを自社開発、食品への印字を可能とした(提供写真)

最初は包装機械と印刷機械の隙間のニーズを満たした。包装機械にゴム印による印字を組み合わせたシステムは、コスト削減となるため需要が広がり、業容は順調に拡大した。包装も、段ボールからフィルムやシートなど、多様な素材に対応した。
1980年代には技術革新に伴い、コンピュータを利用して多様な文字や図の印字が可能なインクジェットプリンター方式への転換を決意。新技術のエンジニアを集め、86年に最初のインクジェットプリンターを発表し、翌年発売した。同時に、顧客への対応力を高めるため、東京をはじめ各地に営業所を展開した。
89年には、開発研究所を建設して開発力を高めた。99年に、タマゴの殻に直接印字できる可食性インクを発売。さらに、錠剤など薬品への印字も可能なインクを開発した。

「企業は長く続いてこそ価値がある。次に何をやるかが大切」と語る釜中社長

「企業は長く続いてこそ価値がある。次に何をやるかが大切」と考える釜中社長。規制の厳しい可食性インクの分野で、食品、薬品への事業拡大を進めると同時に、印字技術の新たな応用領域を常に探っている。

ナノ粒子化した金属を「インク」として基板にプリントして電子回路の配線を行う装置で、すでに研究者向けに実用化されている。プリント技術の新領域を開拓する取り組みだ

その一つが、金や銀など金属のナノ粒子インクと、そのインクを使えるプリンターの開発だ。一部はすでに実用化され、基板への配線をプリントすることができるものが、研究機関向けに発売されている。さらに、太陽光発電装置の配線部品の製造など、さらなる応用が期待されている。
「機械、電気、インク(化学)と、うまく切り替わってきた。次は“物理屋”になる」と、釜中社長は会社の将来図を思い描いている。

企業データ

  • 本社:和歌山市布引466
  • HP:https://www.kishugiken.co.jp/
  • TEL:073-445-6610
  • FAX:073-448-2005
  • 創立:1968(昭和43)年12月
  • 資本金:1000万円

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