輝く地域の中小企業

「仮設トイレ」の新境地を開く
製品で市場を広げる

日野興業株式会社

「仮設トイレ」を「快適トイレ」に──新たな時代のニーズに応える

「汚い、暗い、狭い」仮設トイレのイメージを覆して躍進

トイレユニットは、2人いれば30分程で組み上がる

大小の用を足すことは、どんな人にもある生理現象であり、人が長時間いる場所には、必ずトイレが必要となる。建設現場、屋外イベントの会場、災害発生地などでは仮設トイレが設置されるが、「汚い、暗い、狭い」というイメージがつきまとう。
その常識を覆す仮設トイレ等の製造・販売・レンタルに取り組むのが、日野興業株式会社(千葉県市川市、積田喜信社長)だ。現社長の祖父・庄之助氏が1937(昭和12)年、金物店を創業した。建設現場に資材を納入した縁で、現場のトイレ事情を改善する相談を受けた。当時は、地面に穴を掘って木の板で囲んだだけで済ませるのが普通だったが、スチール製鋼板のボックスに便器を設置する現在の仮設トイレの原型のような製品を開発し、製造・販売を始めた。現場が後始末に困っていたので、回収サービスを始めたところ、喜ばれた。また、現場で使用した仮設トイレを回収して整備したものを再利用する流れも始まり、その後レンタル事業となり、現在では売上の4分の3を占める。

2016年熊本地震の際は、経済産業省の要請により簡易トイレ約1200個、仮設トイレ約500棟を出荷。一部は自衛隊が空輸して設置した(同社提供)

当時の製品は差別化がしにくく、販路や人の力が大きかった。同社は、顧客の要望や意見を積極的に製品に反映させるとともに、全国に拠点を展開し、メンテナンス等、ランニングコストの削減提案やレスポンスを高めることで、支持を集めた。また、拠点の全国展開により、災害発生時にいち早く仮設トイレを供給することが可能となり、自治体などからの要請も増えることになった。

“よりよい環境づくりを通して社会に奉仕”の精神で

新たな時代の新たなニーズに、新たな製品展開で応える

便器の流水テスト。同社製品は、一般的な屋内用トイレのJIS基準をクリアする

近年では、建設現場への女性進出が目覚ましく、特に技術職や管理職で現場に女性が常駐することも多くなった。そのため、仮設トイレも更なるレベルアップが求められている。同社では2015年夏、この動きに対応して女性専用の「フラワートイレ」を出して話題を呼んだ。フラワートイレ導入を、女性技術者などの社員獲得のPR材料にする建設会社も出てきている。

VIP用高級仮設トイレ。大手住宅建材メーカーとのコラボで、新市場開拓を狙う戦略商品だ。住宅用の建材を多く使うなど、従来の屋外仮設トイレのイメージを払拭して高級感を打ち出す

トイレ改善を求めるのは、女性だけではない。16年、国土交通省は建設現場を男女ともに働きやすい環境にするため、「快適トイレ」を標準化し、公共事業の現場ではこれを原則化する方針を打ち出した。洋式、臭い対策、施錠機能、照明、目隠し、鏡付き手洗い器、荷物フックまたは置き場といった11項目を標準仕様として求めている。
同社でも、大手ハウスメーカーとのコラボレーションで一般家庭用のトイレと遜色ないレベルのVIP用仮設トイレを開発し、新たな市場を開拓するための戦略商品として投入する。

「仮設トイレの先駆者であり続け、あらゆる現場を快適にしたい」と語る積田社長

これら一連の同社製品は、仮設トイレ業界の新たな取り組みの呼び水となり、業界を活気づかせている。
「当社の社是は“我々はよりよい環境づくりを通して社会に奉仕します。”将来的にはメーカー系レンタル会社のトップを目指す」と積田社長は熱く語る。

企業データ

  • 本社:千葉県市川市原木3024
  • HP:http://www.hinokogyo.co.jp/
  • TEL:047-318-8761
  • FAX:047-318-8758
  • 創業:1937(昭和12)年2月
  • 設立:1952(昭和27)年4月
  • 資本金:5000万円

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