輝く地域の中小企業

大工を育て、棟梁を育て、
まちを育てる工務店を目指す

株式会社木の家専門店 谷口工務店

「みんなが喜ぶ家づくり」で大工の誇りを取り戻す

町家を再生した商店街ホテルでまちおこし

根継(ねつ)ぎ。柱や土台などの腐った部分を取り除き、新しい材料を継ぎ足して使う再生技法。古民家ホテルでも随所に見られる。こういったリノベーションができる大工は減少の一途をたどる。同社では若い大工にもこのような技術を継承している(同社提供)

滋賀県の県庁所在地大津市は、琵琶湖の南西端にあり、比叡山を挟んで京都市と隣接する風光明媚な土地である。江戸時代は琵琶湖水運の拠点であると同時に、東海道で京都に入る前の身支度をする宿場町として大いににぎわった。しかし、いつしか活気が失われた街の活性化の起爆剤として注目を集めるのが、「商店街HOTEL講大津百町」だ。
空き家となった町家をリノベーションして、中心市街地および東海道沿いに7棟を展開。一棟貸し、部屋貸し全てがスイートルームで、家族で町家暮らしが実体験できると人気を呼んでいる。「街に泊まって、食べて、飲んで、買って」をコンセプトとするホテルは、大津の魅力を発信する。このホテルを企画・建築しているのが、株式会社木の家専門店谷口工務店(滋賀県竜王町、谷口弘和社長)だ。
谷口社長は、バブル期から大手ハウスメーカーで大工をしていたが、大量生産で分業化が進んだ家造りに疑問を持っていた。現場監督という管理者はいるが「棟梁」はいない。
棟梁とは、営業から設計、施工、メンテナンスまで、すべてをこなし、大工も育成する。住人とは顔なじみで、家の建築をするだけでなく、不具合はすぐ直すなど、生活に欠かせない存在であったが、このままでは、いい大工がいなくなるという危機感も抱いていた。

棟梁が大工を育てる人材育成サイクルを再構築

若手の設計士や棟梁も直接顧客と対話し、要望にどう対応するか積極的に意見を出す。また、棟梁や大工も含め、インターネットを駆使して遠隔地の顧客や地元業者とコミュニケーションを取り、棟梁を派遣することで全国の施工を引き受けられる体制となっている(同社提供)

谷口社長は2001年、ハウスメーカーから独立して父の工務店を引き継ぐと、棟梁が大工を育てる人材育成サイクルを復活させるため、大工を育て、棟梁を育てていくことを目標に掲げた。ハウスメーカーに単に使われる存在から大工を引きあげ、棟梁として独立できる人材の集まりを目指した。そのため大工を社員とし、社会保険はもちろん、育休制度なども導入した。
現在、同社の大工は40人。今では同社で育った若い棟梁が仕事を教えるようになったこともあって、人材育成のサイクルがスムーズに回転しはじめた。営業や現場監督など多様な仕事を兼務する棟梁の存在が、同社を躍進させている。

古民家を再生する大工の技がまちをよみがえらせる

大工がまちをよみがえらせる「三方良し」の事業に取り組む

「大工を育て大工の技でまちをよみがえらせたい」と語る谷口社長

冒頭に述べた町家のリノベーションでは、社長が育てた棟梁たちが企画構想から中心となってプロジェクトを推進した。また、リノベーション物件に実際に宿泊してもらうことで、住宅建築需要喚起も期待できる。さらに、かつての宿場町のにぎわいを取り戻そうとする大津市の「宿場町構想」の一翼を担い、観光振興にも大きな役割を果たす。棟梁は近江商人の掲げる「三方良し」の理念を体現する存在だと社長は語る。
「大工だけでなく他分野の職人にも取り組みを広げたい。特定の人のために特定のものを作る古き良き職人文化は、心の豊かさを生み出す。大津を職人の聖地にしたい」と谷口社長の夢はさらに広がる。

企業データ

  • 本社:滋賀県蒲生郡竜王町山之上3409
  • HP:https://taniguchi-koumuten.jp/
  • TEL:0748-57-1990
  • FAX:0748-57-1835
  • 大津百町スタジオ:滋賀県大津市御幸町1-56
  • TEL:077-526-8881
  • FAX:077-526-8882
  • 創業:1995年(平成7)6月
  • 設立:2011(平成23)年7月
  • 資本金:900万円

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