輝く地域の中小企業

工作機械メーカーが取り組む
最先端の養殖用稚魚の種苗生産

株式会社山崎技研

DNA解析を強みとし“産卵から稚魚まで”に特化

高知の工作機械メーカーが養殖用稚魚生産に

マダイの親魚(しんぎょ:産卵させるための魚)の尾の付け根に個体識別用のPITタグ(RFIDの一種)を埋め込む作業。すべての親魚の写真やDNAなどのデータを蓄積し、優秀な稚魚を生み出すために活用している

 近年、魚の値段が高くなっている。世界的な魚食ブームで、水産資源が逼迫しているからだ。そのなかで養殖業の重要性がますます高まっている。養殖は稚魚を成魚まで育て上げて出荷する。養殖用稚魚には、天然の稚魚をある程度の大きさまで育てた「稚魚生産」と、卵から育てる「種苗生産」とがある。この種苗生産で、近畿大学水産養殖種苗センターと双璧をなすのが、㈱山崎技研(高知県香美市、森尾孝博社長)だ。
 同社は山崎道生会長の父、圭次氏が1948(昭和23)年に設立した山崎内燃機関研究所に始まる。当初はオートバイ生産をしていたが、大手資本の大量生産に抗しきれず、65年には工作機械メーカーの㈱山崎技研に発展した。同社の主業は、今も工作機械の製造である。
 同時に、創業者は、高度経済成長のなか、公害により海の魚が減ったと嘆く漁業者の声に危機感を抱き、62年に浦戸湾を守る会を結成。公害企業に抗議の声を上げ、全国各地を飛び回り、78年から8年間、全国自然保護連合会長も務めた。

水産事業部を立ち上げ種苗生産事業を開拓

シマアジの稚魚の体長測定。毎日行い、形や色の異常の有無なども確認する

 父圭次氏の指示もあり、山崎会長は1972年、養魚場を開設し水産事業部を立ち上げた。
 「当時の養殖は、天然の稚魚による“稚魚生産”で稚魚が不足し、枯渇も心配されていた。そこで“種苗生産”に着目した。先行企業はなく、軌道に乗るまで10年以上かかったが、創業者は続けさせた。『天然資源を増やす。自分の育てた魚が海で泳ぐ』ことにロマンを感じていたのだと思う」と山崎会長は振り返る。
 13年目には黒字に転じ、以後黒字が続いているという。
 「親魚用大水槽をはじめ、環境、水温、酸素、光をコントロールできる最先端設備への投資を創業者は惜しまず、技術力の高い業者の協力も得られたことが、成功の要因だ」
 また、コンピュータ制御もいち早く導入し、これが現在に至るノウハウの構築につながった。同社の最大の強みは遺伝子情報の管理にある。遺伝子操作ではなく、優秀な稚魚を生み出す遺伝子を選抜して残す系統管理を進めている。そのことが、同社の稚魚を買えば養殖が成功する、との信頼につながっている。

夢と生命を造り、水産資源の発展を目指す

生命あふれる海を取り戻し、世界の自然を守るために

「生命あふれる豊かな海を取り戻し"自然と人との共存"を目指す」と語る山崎会長

 同社がこれまでに取り組んできた種苗生産はクロダイに始まり、マダイ、シマアジ、ヒラメ、トラフグ、ブリ、クロマグロなど30種類余に及ぶ。特にマダイ、シマアジは同社の事業の柱になっており、ブリの主力化にも取り組み始めている。また、「生命あふれる海を取り戻したい」という創業者の思いを受け、クロダイやメジナの稚魚放流も続けている。
 「今後も、高知、日本、世界全体の自然を守り、自然と人が共存することのできる世界を未来に引き継ぐのが、われわれの仕事だ」と山崎会長は熱く語る。

企業名:株式会社山崎技研 スライド

企業データ

  • 本社:高知県香美市土佐山田町テクノパーク2
  • HP:https://www.ii-yfish.jp/
  • TEL:0887-57-6222
  • FAX:0887-57-6223
  • 創業:1948(昭和23)年3月
  • 従業員:130名(全事業部計)
  • 資本金:6000万円

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