輝く地域の中小企業

京都の伝統を守るため 
新たな伝統を創造する

株式会社くろちく

“文化財の生きた伝承”のため町家再生に取り組む

京都の伝統を守るため観光資源づくりに取り組む

くちろく本店 天正館。本社を兼ねる再生した町家のなかにあり、創業時からの伝統工芸品などの和雑貨を販売する

 京都は日本最大級の観光拠点である。最も魅力なのは古都1200年の歴史を感じさせる伝統文化にある。
 ㈱くろちく(黒竹哲也社長)は、社長の父・黒竹節人会長が1974(昭和49)年、京土産となる和雑貨を製造販売するショップ「クラフトくろちく」を展開し、㈱クラフトくろちくを設立したのが始まり。黒竹会長の父は宮大工、母は西陣織を家業としていたが、10歳のとき父が他界。仕事をしながら中学・高校に通い、独立起業を意識し始めた。
 25歳のときから嵯峨野や曼殊院門前などで色紙や短冊に絵を描いて売り始め、翌年からショップを創業し店舗展開を始めた。顧客との直接対話にヒントを得ながら商品開発を進めたところ売れ行きが良く、京都以外の観光地への商品の卸も始めた。
 京都ブランドの強みを実感した黒竹会長は「京に伝わる日本の伝統を継承する」ことを企業理念として、「観光資源を生み出すことが肝要。それには衣食住すべてが関わる」と考え事業を広げていった。

京都文化を“生きた形”で継承、文化で飯を食える企業を目指す

百足(むかで)屋。1989年オープンの「町家レストラン」。百千足館の向かいにあり、取り壊し予定だった町家を再生活用する端緒となった。京都のおばんざいなどを提供する。食事の写真は「百足屋三段重」で、特に女性に人気だという

 1980年代、京都はハイテク産業(日本電産、京セラほか)の奨励・育成が進められていたが、黒竹会長は「意地でも文化で飯を食っていこう」と考えた。
 「ハイテク技術でも、その源泉は伝統工芸にあるものが多い。そのことを忘れて『文化で飯が食えるか』と言われていた。それなら、自分は文化で飯を食っていこうと思った」と黒竹会長は振り返る。
 1989(平成元)年、同社の10周年記念事業として、取り壊し予定の京町家で京の「おばんざい」を出す店「百足屋」をオープン。テレビなどで紹介され「町家で商売すると繁盛する」と評判になり、京町家の街並みを保存する京町家活用保存事業が本格化する端緒となった。
 「伝統的な町家の遺構を体感してほしいと思い、再生にあたり元の町家の良さを取り戻すようにした。また、残すためには建物が自らの“維持費用”を生み出さねばならないとも考えた。そこで2時間ほど滞在して町家を味わえる飲食店にした。博物館とは違う、文化財の生きた伝承をしようと、このような建物の再生の仕組みをつくった」(黒竹会長)
 94年に現社名に変更し、現在は伝統工芸品・和雑貨・観光土産品の企画製造卸販売事業、小売販売事業、飲食事業、ブライダル事業、ホテル事業、観光開発事業、設計デザイン不動産事業の7つの事業を展開する「くろちくグループ」となっている。

“文化で飯を食べていく”ために

“楽しみながら商う”ことで面倒なことを続ける

「文化の伝承を将来に向け担っていく」と語る黒竹会長

 「人が楽しむ、趣味性のことはビジネスに必ずつながる。『楽しみながら商う』精神が大切だ。楽しんでいればこそ、面倒なことでも続けることができる。そこに当社の強みがある」と黒竹会長は言う。伝統工芸の技術のハイテク活用など、多様な伝統の伝承を構想する。

企業名:株式会社くろちく スライド

企業データ

  • 本社:京都市中京区新町通錦小路上ル百足屋町380
  • HP:https://www.kurochiku.co.jp/
  • TEL:075-256-9393
  • FAX:075-256-7701
  • 創業:1974(昭和49)年6月
  • 従業員:96名(グループ計)
  • 資本金:5000万円

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