輝く地域の中小企業

シンクロリフトを武器に
「船の総合病院」を目指す

株式会社アイ・エス・ビー

「シンクロリフト」で船体への負荷が大幅軽減

国内でも数少ないシンクロリフトを強みに躍進

シンクロリフトのコントロール室。高い位置から全体を見渡すことができ、リモート操作で作業負担、危険も大幅に軽減される(同社提供)

 造船、修繕で使用するドックは、船体を水面より陸上に上下架し作業をする。その方式として、大型造船所では収納した船の周りの水を抜くドライドック方式を採用するが、小型造船所ではスリップウェイ(斜路)を設置しウインチにより船を上下架する方式が一般的だ。
 シンクロリフト方式は、1954年に米国で開発されたもので、複数のウインチを同期させ船を水面より陸上レベルまで持ち上げ、その後レール上を縦横に水平移動させる。この方式は、ドックの基本構造を変えるため代替地の必要性もあって日本国内にはまだ3カ所しかないという。近年は用途により船底形状が多様化しており、いかなる船型にも対応できるシンクロリフトの需要は高い。
 このシンクロリフトを強みに、東京湾の船のメンテナンスや造船、エンジニアリングを手広く請け負うのが、(株)アイ・エス・ビー(ISB、千葉県富津市、米口勲社長)だ。
 造船不況とバブル崩壊で業績が落ち込んだ(株)石井造船所(1964年創業)から99年、船主、仕入先、下請協力会社等の出資を受けアイ・エス・ビーが営業権を買い取り、営業を開始した。

船の修繕を主事業とし、造船、エンジニアリングも手掛ける

3D-CADでの設計図作成。エンジニアリング事業の一環で、既存の設計図面を販売することも多いという

 船の修繕を主に経営再建に取り組み、2004年に石井造船所の工場施設を買収して修繕、造船、エンジニアリングの3本柱の現体制となった。エンジニアリング部門は造船用シンクロリフト建設時の造船所ノウハウや既成船の設計図の提供などを行う。
 造船所には多種多様な作業部門があるが、エンジン、電気等の特殊作業ができない造船所も多い。同社はこれまで難易度の高い特殊船等の新造船を手掛けており、設備はもちろん、ノウハウを蓄えた技師も多数擁する。そのため、あらゆる修繕に対応する「船の総合病院」としてのサービスを提供できるのが強みだ。

脱炭素時代に対応し、洋上風力発電関連に注目

サービスの維持・向上と「脱炭素」対応に注力

将来の脱炭素社会への対応プランについて語る米口社長

 「船がドックに入る間、乗組員が宿泊するドックハウスを造った。以前は付近の民宿を斡旋していたが、顧客サービス向上の一環だ」と言う米口社長。同社は地域の雇用創出にも貢献する。「石井造船所時代からの生え抜きの技師が今も大多数。そのなかで、造船と修繕の両方をやることで技師の養成もうまく進む」
 同社の将来について米口社長は、「脱炭素」対応が重要だという。
 「石油を運ぶタンカーのニーズは確実に減り、修繕も少なくなる。再生可能エネルギーという点で、船舶関係では洋上風力発電設備がこれから大きくなる。そこで何ができるかを考えるのが重要だ。当社ではCTV(作業員輸送船)を市場投入し、SOV(洋上風力発電所メンテナンス支援用の専用船)も2028年頃に需要が立ち上がるのを見越して設計を進めている。さらに、水素エネルギー船の開発にも着手した」と、米口社長は事業プランを熱く語る。

企業名:株式会社アイ・エス・ビー  スライド

企業データ

  • 本社:千葉県富津市新富41-2
  • HP:http://www.isb-se.co.jp/
  • TEL:0439-88-0700
  • 設立:1999(平成11)年6月
  • 資本金:4000万円
  • 従業員:52名

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