輝く地域の中小企業

特殊素材の特殊船建造が強み
部品製造を内製して差別化

北日本造船株式会社

積極的な設備投資で部品加工も内製化

「誘致企業」として創業
「プロダクトミックス」で生き残り

大型ドック内、バルクキャリアの建造初期段階。船底部分の枠組みが設置され ている。

 北日本造船㈱(青森県八戸市、磯谷実社長)は、古くから漁業で栄えてきた八戸で地場唯一の造船所として強みを発揮してきた。
 同社は1969年、多くの漁船が寄港する八戸で、鋼製船舶の建造・修理を行う企業が必要との地元要請を受け、市当局や鉄工関連の団体が中心となり青森県の誘致企業として設立された。当時市議であった中里信男氏が初代社長に就任、現社長は4代目となる。
 ところが、その後の諸外国による排他的経済水域の設定など漁業を取り巻く環境の変化で、漁船建造・修繕受注は激減する。こうした状況にも同社は順次対応し、1980年代は冷蔵運搬船を主軸にLPG船、RORO船を建造、さらに2000年代以降は、現在の主力であるケミカルタンカーのほか、バルクキャリア、冷凍船にも範囲を広げ、東北・北海道では最大規模の造船業者となった。
 「市場のニーズを的確にキャッチして柔軟に対応する『プロダクトミックス戦略』で生き残ってきた」と磯谷社長は振り返る。

環境対応型の船舶建造を強化し社会貢献を目指す

「高品質」と「内製化」で他社との差別化

レーザー切断、鉄板曲げ作業の様子。同社は船の各ブロック製造から内製化し、切断、曲げ、切削、溶接等の各工程を自社工場内で行っている

 北東北の端という立地は、決して恵まれているとは言えず、県外からも受注を得るためには他社との違いを示す必要がある。同社の鋼製船舶建造の技術力は業界屈指であり、特に、酸性・アルカリ性の劇物となる液体の輸送にも耐えられるフルステンレスのケミカルタンカーを日本で製造できる数少ない一社となった。こうした特殊で高品質な船舶の建造には高い技術のエキスパートが各分野で必要である。同社は八戸市内に3カ所、岩手県に1カ所の自社工場があり、自社内の部署のほか協力会社も多く、無駄のない連携でその製造を可能にしている。
 また、近隣に部品加工を外注できる業者がないため、オリジナルの部品加工機への設備投資を積極的に行い、鉄板の切断、溶接含め全てを内製化してきた。結果、それが特注へのフレックスな対応やコスト削減につながっている。
 さらに最近では、時代の要請を受け、温暖化の原因とされる窒素酸化物の低減装置、コスト削減が見込める新素材のステンレス使用、燃料にメタノールも使えるハイブリッド船などの開発にも積極的に取り組んでいる。

「現状維持は後退」
人材も事業も常に進歩を目指す

青森県の造船事業振興について語る磯谷社長

 生産設備の充実は重要だが、「当社の目指す方向性を理解し、そこにどう取り組むかを自ら考え、実行していく人材をどう育てていくかがとても重要だ」と磯谷社長は言う。失敗してもいい。そこから実践で学んでほしいという社員への思いがある。
 今後については、環境面での社会貢献は当然のこととして、現状では少ない地元青森県の商船主からの受注増を目指したいという。「海運への理解を広め、商船業のメリットをPRして地元からの参入を呼び込みたい」と磯谷社長は将来を語る。

企業名:北日本造船株式会社 スライド

企業データ

  • 本社:青森県八戸市江陽3-1-25
  • HP:http://www.kitanihonship.com
  • TEL:0178-24-4171
  • FAX:0178-22-7803
  • 創業:1969年4月
  • 資本金:1億円
  • 従業員:1373名(グループ計)

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