社長ご挨拶

関根取締役社長写真
2022年1月 株式会社商工組合中央金庫 取締役社長 関根 正裕

ご挨拶

 皆さまには、平素より格別のお引き立てを賜り、誠にありがとうございます。
 商工中金は、お取引先である中小企業や中小企業組合に寄り添い、深い対話を通じて様々な課題やニーズを把握する事業性評価を起点として、景気に左右されない金融スタンス等の特性を最大限に活かして的確なソリューションを提供する「経営支援総合金融サービス事業」を展開しております。A)借入負担が重く資金繰りに不安がある、B)債務超過や赤字等、財務・収支上の課題を有している、C)リスクの伴う海外展開や新事業進出の計画がある、D)創業間もなく資金調達に不安がある等の悩みや課題を有している中小企業に対して、踏み込んだファイナンス支援、伴走型の経営改善支援、M&Aや事業承継支援等、抜本的な課題解決に繋がるソリューションを提供していくことにより、地域経済を支える中小企業の企業価値向上に貢献してまいります。また、未来志向の構造改革を着実に進めることにより、適切な人員体制や経費構造を確立し、持続可能な成長を目指してまいります。

金融経済環境

 2021年度上半期のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に伴う昨年度の悪化局面からは持ち直しつつあるものの、全国各地で緊急事態宣言などが断続的に発令される中で、飲食や旅行関連などの対面型サービスセクターを中心に依然として厳しい状況にあります。
 中小企業の景況感をみますと、商工中金の「商工中金景況調査」では、製造業で持ち直しの動きが続く一方、一部の非製造業を中心に厳しさが残るなどばらつきがみられました。また、足元の資源価格の高騰などを受け、仕入価格の上昇が継続しており、中小企業の収益を圧迫することが懸念されています。
 企業からみた金融機関の貸出態度は緩和的な状態が維持されており、企業倒産は低水準で推移しています。ただし、取引先を取り巻く環境の変化によっては、与信費用の増加等を通じ、国内金融機関の収益に影響を及ぼす可能性があります。

2021年度上半期の回顧

 2021年度上半期においては、引き続き新型コロナウイルス感染症の影響で業績悪化を強いられている事業者に対する資金繰り支援に取組むとともに、取引先企業の業況を積極的に把握し、ニーズに応じたきめ細やかな支援を実施いたしました。
 商工中金では中期経営計画「商工中金経営改革プログラム」において、経営改善、事業再生や事業承継等を必要としている中小企業や、リスクの高い事業に乗り出そうとしているもののうまく進められない中小企業に対して重点的に支援を行う分野を、AゾーンからDゾーンまでの重点分野として定義し、支援を強化してまいりました。
 重点分野への取組みは、中期経営計画の根幹をなすものであり、実行件数や貸出残高をKPI(Key Perfomance Indicator:目標の達成度を定量的に評価する指標)として設定し、公表しております。
 新型コロナウイルス感染症の影響を受けたことで生じる新たな課題やニーズの変化への対応は、まさに「経営支援総合金融サービス事業」の事業領域であることを踏まえ、ビジネスモデル確立に向けて、重点分野に対する取組みへの一層の注力が必要であると考えております。
 ボリュームゾーンであるAゾーンは、新型コロナウイルス感染症の影響で資金繰りが悪化した取引先中小企業に対し、より踏み込んだ支援を行っていく必要があると認識しております。
 経営改善支援等を行うBゾーンについては、新型コロナウイルス感染症の影響で、財務・収支上の課題が顕在化した取引先を含め、中小企業の収支改善や営業キャッシュ・フローの増加を通じ、増加した債務の圧縮等の経営改善が図られるように、資本増強支援策等も活用し、中長期的な目線を持って能動的にサポートしてまいります。
 CゾーンおよびDゾーンについては、新型コロナウイルス感染症の影響で事業計画や調達計画の変更を余儀なくされた取引先中小企業も多いことを踏まえ、これらの変更に対応するための新たなニーズを捉えた支援を実施してまいります。
 なお、中間期の収支につきましては経常利益が262億円、中間純利益が189億円となりました。
 この間の株主の皆さまならびにお取引先の皆さまのご支援に厚くお礼申し上げます。

今後の業務運営

 長期金利が低位で推移する中、商工中金をはじめとする国内金融機関の収益には下押し圧力がかかっており、その中でも安定的な収益を確保していくためには、基礎となる取引先中小企業との対話を通じた課題・ニーズの共有を図るとともに、踏み込んだ支援に伴う付加価値の高いソリューションの提供を一層加速させていく必要があります。そのため、取引先中小企業から課題や悩みを相談していただけるリレーションの構築、課題や悩みの背景や本質を理解するための事業性評価力の強化、課題解決に繋がるソリューション提供の高度化を着実に進めてまいります。
 商工中金の貸出先の大部分は外部環境の影響を受けやすい中小企業であり、人手不足等の構造的問題に加えて、新型コロナウイルス感染症の影響で業績悪化を強いられています。従って、当面は危機対応業務の指定金融機関として、2020年8月より取扱いを開始いたしました資本性劣後ローンを含めて、制度を的確に運用しつつ、影響を受けられた中小企業の皆さまに懇切・丁寧かつ個別の実情に応じた迅速な対応を行ってまいります。
 加えて、借入金の急激な増加、新業態におけるビジネスモデルや商流の変化、業界再編等への適応、気候変動リスクや社会のデジタル化への対応等、中小企業の課題やニーズは一層多様化しており、伴走型の支援体制の強化や予兆管理の高度化を進めることにより、これまで以上に適切な対処法のアドバイスやソリューションの提供を行っていく必要があります。財務・収支上の課題を有し、事業再生や経営改善を必要とするに至った取引先中小企業に対しては、地域の金融機関と協調し、商工中金の特性を活かしたソリューションも活用しながら、中長期的な目線を持って地域経済を支える中小企業の経営改善等をサポートしてまいります。
 これらの取組みを持続的なものとするため、未来志向の業務改革と徹底した経費削減に努めてまいります。WEBやスマートフォンアプリ等の非対面チャンネルを効果的に活用し、顧客利便性を確保しながら、店舗機能の見直し等による運営コストの低減を図りつつ、持続可能な資金調達の確立に取り組んでまいります。また、情報のデジタル化や高度化により取引先中小企業の本業支援への取組みを強化しつつ、ペーパーレス化やシステム化により、事務の集中化や効率化を図ることで、取引先中小企業との対話に充てる時間を増やしてまいります。
 また、引き続き、ビジネスモデルを支える屋台骨としてのコンプライアンス意識の定着化や内部管理態勢の強化に取り組むとともに、職員の能力を最大限に発揮できる人事制度の構築、ダイバーシティの推進やインクルージョンの徹底にも取り組み、中期経営計画で目指すビジネスモデルの確立に向けて邁進してまいります。

むすび

 「中小企業による、中小企業のための金融機関」として、皆さまから信頼され、支持され、これまで以上にお役に立てるよう、役職員一同、全力で努力を続けてまいります。
 皆さまのこれまでの格別のお引き立てに感謝申し上げるとともに、引き続き力強いご支援を賜りますようお願い申し上げます。