輝く地域の中小企業

削る、磨く、組み立てるの3本柱で
精密部品加工に独自の地位を築く

株式会社共進

違う材質の部材をつなぐ「カシメ接合」を力に

精密部品の切削・研磨をコアに諏訪で育つ

カシメ接合工程。片方の部品の軸や爪などを、もう片方の穴にはめ込み、特殊な機械でプレスしてカシメる

 長野県諏訪市は、戦時中の工場疎開を機に、時計など精密機器の工場が集積し、「東洋のスイス」の異名を馳せた。そこで60年近く、自動車向けなどに精密部品製造を続けてきたのが㈱共進(五味武嗣社長)だ。
 現社長の父・和人会長は、旋盤工から独立し、1962(昭和37)年に共進精機㈲を設立し、切削加工の工場を始めた。83年の台風の水害で工場を失い、他社がやりたがらないソレノイド鉄芯の製造専業となったが、80年代後半に普及したオートマチック車の変速機にこれが必要とされ、飛躍の礎となった。ソレノイド鉄芯の低コスト量産を実現したことをきっかけに、さまざまな自動車部品を手がけるようになり、97(平成9)年に現社名となった。

切削・研磨にカシメ接合を加えた3本柱で発展

研究開発部門。カシメ接合した試作品の引っ張り強度を測定し、必要な強度が出ているかを確認している

 その低コストの鍵となったのが、「カシメ接合」。例えば、絵筆の穂は金属の円筒に詰められ、その金属に圧力をかけて固定している。これを「カシメ」という。異なる素材のパーツをつなぐのに有効な技術だ。
 同社では、部材に極小の溝をつけ、プレスにより部材の一部が食い込むことで強い接合を実現している。接合部分をきれいに作るには、切削と研磨の高い複合技術が必要となるが、使い方次第で材料や加工時間を大幅に削減でき、高い精度と強度も得られる。部品の一部分だけ熱処理が必要な場合など、応用範囲は広い。
 同社が手がける部品は、指先ないし爪ほどの大きさのものが大半で、現在は自動車向けが8割を占める。エンジン、変速機、サスペンションなどに使われ、油圧系統の油量調節の「弁」などもある。これを、同社の切削、研磨、組立(カシメ接合)の技術を連係させることで、安く早くいいものを作ることができる。
 「これら要素技術の3本柱は、時代が変わっても、あらゆる分野で必要とされる。この3本柱を高度に連係させるのは当社のオンリーワン技術であり、将来にわたって強みとなるものだ」と五味社長は言う。

“社会から必要とされる企業”であり続ける

技術を磨き上げ、さらなる社会貢献を目指す

「削る、磨く、組み立てるの3つの要素技術が当社の柱」と語る五味社長

 近年、海外に工場を移したメーカーが部品の現地調達化を進めている。同社も海外工場を持つが、全世界に工場を持つのはリスクが大きいので、「知的財産」としてカシメ技術を世界に広め、カシメ技術利用の裾野を拡大することに取り組み始めた。これを通じ、ノウハウで一歩先を行く同社の受注増も期待する。
 また、新規分野として注目しているのが医療分野だ。内視鏡やカテーテルなどは今後成長が見込まれている。そこに同社の得意な精密部品の技術やカシメ接合の活躍の余地があると考え、すでに試作も始めている。
 「経営理念は『仕事を通じて社会に貢献し、社会から必要とされる企業となる。』今後も技術を磨き、社会貢献を念頭に事業を進めたい」と五味社長は次の時代を見すえる。

企業名:株式会社共進 スライド

企業データ

  • 本社:長野県諏訪市中洲4650
  • HP:https://www.kyoshin-h.com/
  • TEL:0266-52-5030
  • FAX:0266-52-3314
  • 創業:1962(昭和37)年5月
  • 従業員:157名
  • 資本金:3000万円

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