サポート事例

「地域とともにある会社」を次の世代へ。企業を長女に承継 ~黄金株という選択~

会長 吉田 耕造様
代表取締役社長 吉田 昌子様

沢口産業株式会社(本社:北海道紋別郡湧別町)は、オホーツク海に面した北海道湧別町にて、土木や運輸、農業サービス、産業廃棄物処理、町営施設の受託運営などを営んでいます。1960年に木材加工業として創業後、1985年に二代目として事業を引き継いだ吉田耕造会長が、近隣住民の方のニーズにあわせて事業領域を広げていきました。今ではその事業の広さと丁寧な仕事から「町の便利屋」として、住民にとってなくてはならない存在です。吉田耕造会長は、経営理念である「地域とともにある会社」を守り、「町の便利屋」を存続させるため、長女である昌子氏(現 代表取締役社長)に事業を承継しました。

先代からの承継時の苦労を乗り越え、一つひとつの受注から経営を軌道に

吉田会長は、創業者であり岳父でもある当時社長の沢口一雄氏から突然「売上よりも借金が多くなってしまった。うちの会社はもうだめかもしれない。好きにやっていいから後始末を頼む」と伝えられ、経営権を引き継ぎました。吉田会長は、それまで現場一筋で経営に関する知識はなく、翌年に沢口氏が急逝してしばらくは、手形や小切手の入った金庫すら開けることもできませんでしたが、自分の貯金を切り崩すなどしてその難局を乗り切りました。その後、受注を受けた一つひとつの仕事を丁寧に行うことで信頼を獲得し、売上を増やしながら経営を行ってきました。

地域のため、事業を存続へ

2011年、65歳のとき、吉田会長は次の世代へ事業を引き継ぐことを考えるようになりました。このとき、湧別町近隣の地域では、過疎化が進み自主廃業をする事業者が増えていました。「このままでは農家の困りごとを解決する事業者がいなくなってしまう。危機時に仕事を発注してくれここまで育ててくれた地域に恩返しをするには、後継候補を固め、事業の存続を真剣に考えなければならない。」吉田会長は後継候補として長女の昌子氏を指名し、事業承継のプロセスについて、商工中金が紹介した税理士法人に相談をはじめました。

黄金株という選択一 後継者が1人前の経営者になるまで

事業承継のさまざまな手法の中から吉田会長が選んだのは、「黄金株(拒否権付種類株)」を使用するスキームでした。黄金株は、一株保有するだけで株主総会の特定の議案に対して拒否権を行使できる株式で、事業承継する際に先代が黄金株を持っておくことで、後継者に睨みをきかせ、誤った判断をとがめることができます。吉田会長は、自身が事業を承継した際に大変苦労したこと、また、地域のためにはどのような危機時でも適切な判断をして乗り越えていかなければならないという思いから、昌子氏が一人前の経営者として危機に対処していくことができるようになるまでは、後ろ盾となれるよう黄金株でのスキームを選択したのです。

一社一社にあった承継のスキームを

現在、昌子社長は、時に吉田会長のサポートを受けながらも、取引先や地域、そして従業員から信頼と、経営者としての自信を獲得しつつあります。「地域とともにある会社」を次の世代へ。商工中金は、中小企業一社一社の想いをふまえながら、経営者、後継者、地域や取引先、皆が満足できるような承継をサポートしています。

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